2026.04.03

(2026.6.12訂正)不安の矛先は「他者化された人々」へ向かうーー米・イスラエル・イラン戦争による不安を、 誰かへのヘイトにすり替えないために知るべきこと

(2026.6.12訂正)不安の矛先は「他者化された人々」へ向かうーー米・イスラエル・イラン戦争による不安を、 誰かへのヘイトにすり替えないために知るべきこと

本記事の初出時(2026年4月3日)に掲載していた分析データの一部に、集計上の誤りがあることが判明しました。そのため、該当する数値および、それに基づく記述・分析を修正しております。

修正前・後の対照情報は、記事末尾に記載しております。

誤った情報を掲載してしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。

今後は、データ確認および公開前のチェック体制をより一層徹底してまいります。


不安の広がりと関心のホットスポット

エスカレーション状態にあるアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃。イランによる反撃も加えられ、応酬が続いています。アメリカのトランプ大統領は、2026年4月2日の会見で、2〜3週間以内の撤退を示唆していますが、状況は未だ不透明です。

そしてホルムズ海峡の実質的封鎖から、世界的なエネルギー危機が目前となり、日本国内でも不安を感じている方が多くいらっしゃると思います。

私たちの足元の暮らしが脅かされつつあることから、社会の関心はエネルギー不足に対する政府や国内企業の対応、対策、そしてホルムズ海峡がいかに安全に開通されるべきか、そのためのイランとの交渉はどうなっているのか、またアメリカの要請に応じて自衛隊を派遣するのか否かという点に議論が集中しているところです。

生活者の声へ関心を向け、国内の外国人に対する否定的感情に警戒を

関心のホットスポットが生まれる一方で、関心が向けられていないのが難民・避難民イラン国内の生活者の声です。さらにはイランの攻撃を受けた周辺国の生活者の声です。

また、こうした国際関係の悪化により、日本国内に居住する外国人、特に、中東地域出身の方々に対する否定的な感情の高まりも懸念されます。

チキラボでは、2026年3月17日〜18日にアメリカ・イラン・イスラエル戦争に関する緊急意識調査を実施。

アメリカ、イスラエルによる国際法違反の先制攻撃が行われたことについて、その当事国に対する人々の非難感情を尋ねました。質問は「日本政府はイランをもっと非難すべきだ」という意見に対して、「とてもそう思う」「ややそう思う」「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」「答えたくない」という選択肢から回答いただいています。アメリカやイスラエルに対しても、同様の質問をしました。

また、分析にあたっては「1.まったくそう思わない」「2.あまりそう思わない」を統合して「そう思わない」、「4.ややそう思う」「5.とてもそう思う」を統合して「そう思う」と再カテゴリー化しました。そして、3つの国に対する回答の組み合わせから、人々の非難感情分布を整理したのが、以下のグラフです。

戦争当時国に対する非難感情の分布状況
最多だったのは、「どの国に対してもどちらともいえない」 人で21.3%。続いて 「アメリカ、イスラエルに対して非難すべきだが、イランに対しては非難すべきではない」と考える人が16.4%。

その次が「アメリカ、イスラエル、イランすべてに対して非難すべき」と考えている人で12.6%となっています。この感情と同様に、非難すべき対象に順位をつけられない判断としては「アメリカ、イスラエル、イランすべてに対して非難すべきでない」という場合がありますが、そのような感情を抱いている人は4.5%となっています。

対して、非難感情をイランに対してのみ向ける場合はどうでしょう。「アメリカ、イスラエルに対しては非難すべきでないが、イランは非難すべき」だと考えている人は1.6%、「アメリカ、イスラエルに対してはどちらともいえないが、イランは非難すべきだ」と考えている人は2.0%いました。

ホルムズ海峡の状況が改善せず、今後、長期にわたって日本国内の生活状況が悪化する場合には、現在は少数にとどまっている「非難感情をイランに対してのみに抱く」層が増えていくこと、さらにはこうした一方的な感情が、日本国内の一般のムスリムの人々に対して向けられていくことが懸念されます。

すでに日本では、アメリカによるイラク戦争や国外のイスラム過激派によるテロ事件を背景に、「イスラムがテロリズムと同義であるという観念」が警察の監視活動や安全保障の枠組み、そしてメディアを通じて固定化されてしまっています(タカハシ 2021)。

2015年にイスラム過激派組織「イスラム国」が人質としていた日本人を殺害した動画が広がった際には、名古屋モスクへの脅迫や殺害予告、誹謗中傷などのメールや電話が相次いだとの被害がありました(毎日新聞2015)。

最近では東京の公園でムスリム女性が3歳の長女と公園で遊んでいたところ、園内にいた男性から「息子が蹴られた」と抗議を受け、「長女は蹴っていない」と主張したところ、男性から詰め寄られ、警察にも長時間にわたる聴取を受け、トラウマ的経験を強いられるという事件もありました(Dialouge for People 2021)。埼玉県蕨市に暮らすクルド人に対するヘイトスピーチ、誹謗中傷も深刻化しています。

危機時に反復される「他者化→スケープゴート化」というパターン

災害やパンデミックなど、危機的な状況では普段から他者化されている人々がスケープゴート(いけにえ)にされることは歴史が示しています。

関東大震災時には「朝鮮人が井戸に毒を入れた」や「暴動を起こしている」などの流言が広がり、罪のない朝鮮人たちが虐殺されました。

2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震の際にも、外国人犯罪の流言が広まっています。コロナ禍には最初に感染が確認された中国の地名をウィルスの名前にとり、憎悪を煽る言説も流布されました。

特定の属性の人々と結びつけた流言への予防意識を

これから物資不足が深刻化したり、経済的不安が高まった場合に、以下のような流言の発生に警戒する必要があります。

①危機状況の原因が特定の属性の人々と結びつけられ、「異端視」「危険視」する言説

②物資や支援などの獲得に不公平があることと、特定の属性の人々を結びつけ、「ずるい」「特定の人が優遇されている」とする言説

③危機状況を乗り越えるために求められる行動規範から逸脱したことと、特定の属性の人々を結びつけ、「身勝手」「日本人ではない」などと、非難する言説

他にも様々なパターンがありうると思いますが、特定の属性と結びつけて憎悪を煽る言説を見かけた場合には、加担しない、批判的に応じる、という姿勢が必要です。

先の参院選から衆院選にかけて、排外意識が高まってしまっている今、日本国内に滞在・居住する外国人の方々の安全が損なわれないよう、社会全体での理解と配慮が必要です。

【引用文献】

  • Takahashi, S. J. (2021). Islamophobia in Japan: A Country at a Crossroads. Islamophobia Studies Journal, 6(2), 167–181. https://doi.org/10.13169/islastudj.6.2.0167
  • 毎日新聞・東京夕刊(2015.2.5)「名古屋モスク:脅迫・嫌がらせ、「後藤さん殺害」で急増 イスラム教徒「過激派と無関係」」
  • Dialouge fpr People(2021)「「日本語しゃべれねえのか?」警察の対応から浮き彫りになるレイシズムの根深さー弁護士・西山温子さんインタビュー(書き手:安田菜津紀)」https://d4p.world/12070/(2026年4月2日取得)

【修正前・後の対照情報】

  • 記事の分析に使用した質問文と、数値の計算方法に関する説明を追記
  • グラフを追記
  • 以下の箇所について数値を修正
    • (訂正前)いずれも判断できない人で63.7%→(訂正後)「どの国に対してもどちらともいえない」 人で21.3%
    • (訂正前)アメリカ、イスラエル、イランすべてに対して非難すべきでないと考えている人で38.9%→(訂正後)「アメリカ、イスラエル、イランすべてに対して非難すべきでない」人は4.5%
    • (訂正前)アメリカ、イスラエルに対しては非難しなくて良いが、イランは非難すべきだと考えている人は13.5%→(訂正後)「アメリカ、イスラエルに対しては非難すべきでないが、イランは非難すべき」人は1.6%
  • 「「アメリカ、イスラエルに対して非難すべきだが、イランに対しては非難すべきではない」と考える人が16.4%」を追記
  • 「「アメリカ、イスラエル、イランすべてに対して非難すべき」と考えている人で12.6%」を追記
  • 「「アメリカ、イスラエルに対してはどちらともいえないが、イランは非難すべきだ」と考えている人は2.0%」を追記
  • 記事終盤の、「すでに日本では、アメリカによるイラク戦争や〜」以降の文章は、修正はありません。