2025年7月20日に投開票が行われた参議院選挙。チキラボではこの選挙期間中、日本社会で暮らす人々の政治に関わる意識を明らかにするため、継続調査を実施しました。
調査の概要はこちらをご覧ください。
チキラボの調査データにみる政党支持の分布傾向ー2025年参院選をめぐる有権者の政治意識調査
この調査で明らかになった選挙で最も重視されたテーマは「物価高対策」でした。一方、今回の選挙結果を受けて、自民党内では「石破おろし」をめぐる議論が活発化しています。
チキラボが実施した調査の中では、政治家10名と各政党についての好感度(感情温度)も聞いています。その中で、政党支持者ごとに大きく感情温度の分布が異なった政治家は、「安倍晋三」でした。そして、現職の「石破茂」についても、政党間に相当の差がありました。その平均的な分布を示したのが、以下の図です。
【ポイント】
- 自民党支持者は、「安倍晋三」に高い好感度を示している
- 自民党支持者は「石破茂」については中立的に見ている
- 公明党支持者は、「安倍晋三」「石破茂」両者に対して中立的態度
- 共産党支持者では公明支持者と逆の傾向で、「安倍晋三」「石破茂」いずれに対しても否定的
- 立憲民主党の支持者では「安倍晋三」よりも「石破茂」の方が好感度が高い
- ただし立憲支持者は、「安倍晋三」「石破茂」両者に対して反感を持つ傾向も
- 「石破茂」より「安倍晋三」の方が好感度が高かったのが、国民民主、れいわの支持者
- 国民民主党、参政党の支持者は、「安倍晋三」への反感はない一方、「石破茂」に対して強い反感を示している
- 日本保守党の支持者は、「石破茂」に激しい反感を持ち、「安倍晋三」に好感を持っている
「安倍晋三」と「石破茂」、両者とどのような距離を取るのかで、政党支持者のカラーが分かれていました。「安倍」「石破」に対して中立的な感情を持つグループでは、比例選挙区で「一貫して自民党を選択」した人たちが多くなります。対して、どちらか一方に対して反感が強いグループでは、「一貫して自民党を選択しない」人たちが多くなる傾向にありました。
もし自民党総裁が変わった場合は、この位置取りにも変化がもたらされることになりそうです。
各政党党首の好感度は?
自公を除く概ねの政党支持者は、支持している政党の党首に対して、感情温度60度付近の比較的高い好感度を示しています。各党の代表に対する感情温度の平均を、支持政党ごとに見てみましょう。
▶︎「石破茂」は知名度は高い。新興政党を中心に反感が強くなっている。
▶︎「斉藤てつお」は知名度が低い。公明党に入れた人にすら知られていない。
▶︎「野田佳彦」の知名度は高い。新興政党を中心に反感が強いが、石破氏ほどではない。
▶「玉木雄一郎」は知名度が比較的高い。全体的に中間に分布しつつも、政党によっては忌避傾向も。
▶「吉村洋文」は知名度が比較的高い。政党間でばらつきは大きくないが、共産党や新興政党系でやや反感が強い。
▶「田村智子」は全体として知名度が低い。れいわ、立憲からはフラットだが、自民・公明・参政・日本保守は反感が強め。
▶「山本太郎」は知名度が高い。田村氏と分布が似ている。保守系の既存政党・新興政党双方からの反感が特に強い。
▶「神谷宗幣」は知名度が高くない。やや中間に分布するも、反発傾向がじわりと広がる。
▶「百田尚樹」の知名度は高くない。全体として「反感」寄りだが、神谷氏よりも立民・共産の反感度合いがやや強い。
▶「福島みずほ」の知名度は比較的高い。自民・公明・国民・参政・保守で反感が強い。
▶「立花孝志」の知名度は比較的高い。全体的に反感が強い。
(本調査への回答者のうちNHK党に投票した7名の平均値は80度近い。サンプルが少ないため、NHK党投票者の一般的傾向と言えるかは不確かな点、ご注意ください。)
「杉田水脈」落選とはなんだったのか
最後に、今回落選した候補者の一人に、杉田水脈氏がいます。杉田氏は自民党の比例で出馬しましたが、7万票にとどまり落選。自民党の比例候補31人のうち23位でした。
杉田氏は、政治家としての認知度があまり高くはありませんが、とても低いというわけでもありません。しかし、杉田氏を認知している人のほとんどは、杉田氏に反感を持っています。
特徴的なのは、平均的な自公の支持者からも反感を持たれている点です。自民支持者の「杉田水脈」に対する温度は32。これは、自民支持者が共産党の「田村智子」に向ける好感度と同程度です。
「杉田水脈」を中立的に見るのは日本保守党支持者のみで、参政党支持者からも反感を持たれています。「参政党が自民右派層を奪った」という言説がありますが(この言説の問題点については菅原琢氏のレター参照:https://sugawarataku.theletter.jp/posts/477504a0-6ddd-11f0-be77-f7d50c231858)、仮に参政党がなくても、参政党支持者が杉田氏に入れる可能性は低かったと言えそうです。