2025年7月20日に投開票が行われた参議院選挙。チキラボではこの選挙期間中、日本社会で暮らす人々の政治に関わる意識を明らかにするため、継続調査を実施しました。
調査の概要はこちらをご覧ください。
2025年の参議院選挙では、多くのメディアが選挙報道を展開。そして、これまで以上にYouTubeが参照された選挙でもありました。「YouTube政治」や「切り抜き政治」がスタンダードになっており、選挙終盤にかけてその接触時間が増加しています。
同時に今回の選挙では、テレビ報道での選挙情報も後半にかけて伸びを見せました。
選挙期間中、視聴時間が伸びたのはYouTubeとテレビ
まず、選挙情報を得たメディアやルート別に、選挙期間中の接触時間の変化を確認しておきましょう。新聞、テレビ、ラジオ、雑誌といったマスメディアは「オールドメディア」と呼ばれることがあります。参政党など新興政党の支持者は、一般にこうしたメディアに対して否定的な感情を抱く傾向があります。しかし、選挙期間中には新興政党の支持者を含め、多くの有権者がテレビを通じて選挙情報に接する時間を増やしていました。
そして、YouTubeの伸びも顕著です。他のメディアやルートによる情報接触は、中盤に減少する傾向にもありますが、YouTubeは終盤になるほど見られる傾向を維持していました。
では次に、比例区の投票先政党別に、選挙情報の接触メディア時間の推移をみてみましょう。基本的に、政党間で大きく情報接触状況が異なる結果は多くはありませんでした。
YouTubeは、特に新しい政党の支持者に利用されています。政党支持者の年齢構成も影響していますが、これから新たな層を取り込むには、YouTubeという舞台の活用は欠かせないようです。配信プラットフォーム別でみると、ほぼ「YouTube一強」という状態でした。
▶︎選挙終盤、政党支持を問わずテレビでの接触が増加
▶︎選挙終盤、新興政党支持者のYouTube接触時間が伸びる傾向
なお、「Youtube以外の動画」「SNSの画像投稿」「SNSの文字投稿」「SNS以外のインターネット」での選挙情報の接触時間については、どの政党支持者も同じ傾向で統計的に有意な差はありませんでした。
「ショート動画選挙」の広がりは?
最近では、TikTokやYouTubeショートなど、ショート動画や切り抜き動画の視聴がメディアとして定着しています。第1回調査で「普段からどのようなメディアを利用しているか」という質問の中に、YouTubeやXといったSNSのアプリだけではなく、一般動画かショート動画か、という違いにも着目。選択肢として下記の4つを設定しました。
- YouTubeのショート動画
- Xのリール動画
- Instagramのリール動画
- TikTok動画
比例区投票先政党別にプラットフォーム別のショート動画視聴頻度の分布を確認しましょう。統計的に有意だったのは、YouTubeのショート動画とXのリール動画の分布のみでしたので、それ以外のグラフは参考としてご覧ください。
ショート動画のうち、最も普段から見られていたのはYouTubeのショート動画でした。特に国民民主、れいわ、日本保守党の投票者の間では、視聴頻度が高くなっています。
Xのリール動画は国民民主党、参政党の支持者の視聴頻度が高い傾向がありました。
▶︎国民民主党、れいわ、日本保守党支持者は、視聴頻度が高い
▶︎国民民主、参政党支持者の視聴頻度が高い
▶︎TikTok、Instagramのリール動画は、投票先ごとに統計的に有意な差はない
チキラボが経済安全保障やデジタル影響工作など、新たな安全保障分野をテーマに情報収集・調査研究・発信を行う新領域安全保障研究所(INODS)の依頼を受け、7月の参院選について報告したこちらの記事「なぜ参政党を選んだのか?〈前編〉外国人不安、YouTube視聴」では、ショート動画やリール動画の視聴が、投票行動に影響を与えるのかを分析しています。
結果は、選挙運動におけるリール動画やショート動画の数は増えているものの、投票行動へ影響を及ぼすような状況にはないことがわかりました。
しかし、各政党はショート動画を含めた動画配信戦略を練ってきています。今後、多くの人々のアテンションを得るため、ショート動画やリール動画が選挙戦で存在感を高める可能性が高いでしょう。そうした動画をどのように見極めるのか。大きなテーマが突きつけられています。