2025.09.25

選挙戦終盤、各政党支持者のワード好感度の変化は?ー参議院選挙2025を「科学」する⑤

選挙戦終盤、各政党支持者のワード好感度の変化は?ー参議院選挙2025を「科学」する⑤

2025年7月20日に投開票が行われた参議院選挙。チキラボではこの選挙期間中、日本社会で暮らす人々の政治に関わる意識を明らかにするため、継続調査を実施しました。

今回行ったのは、同じ対象者を複数時点にわたって追跡する「パネル調査」です。第1回目は選挙序盤の7月4日~5日に、第2回目は選挙中盤の7月11日~14日に、第3回目は開票日直後の7月21日~22日にそれぞれ実施。人々の変化を追いました。

この記事では、第2回調査と第3回調査で継続調査した「日本人ファースト」「多文化共生」「マスメディア」への感情温度の結果を紹介します。また、第3回調査で新たに調査したワードについても、政党支持者別に結果を見ていきます。

感情温度とは、人物などについての好感度を温度に例え、どれくらい好感を抱くのか、あるいは反感を抱くのかを尋ねて可視化する調査尺度です。具体的な質問は、次のようになっています。

政治や社会の話題でしばしば取り上げられる肩書や言葉についてうかがいます。以下の肩書や言葉に対する感情を温度にたとえてお答えください。もし好意も反感もない場合は 50 度としてください。好意的な気持ちがあれば、その強さに応じて 60 度から 100 度の数字を選択してください。逆に、反感を感じていれば、やはりその強さに応じて 0 度から 40 度までのどこかの数字を選択してください。もし、ご存知でない場合、わからない場合、答えたくない場合は、「DK」をチェックしてください。

この感情温度で示される好感度は2回目調査から3回目調査にかけて、どのように変化しているのでしょうか。

選挙終盤でも「日本人ファースト」 「多文化共生」への好感度は別れる結果に

第2回調査時のワード好感度はこちらの記事からご覧いただけます。第2回調査結果と同様、投票が締め切られた後に実施した第3回目調査においても、「日本人ファースト」と「多文化共生」への好感度の各政党支持者の傾向は大きく変わってはいません。

ただ、「日本人ファースト」は第2回目と第3回目に10度弱の変化がある政党もあります。自民党投票者や公明党投票者は反感方向に変化、逆に日本保守党は好感方向に変化しています。終盤の1週間の間に、「日本人ファースト」に対して懸念を示す割合が高まった自民党支持者と、共感をより強めた日本保守党支持者という様子が見えます。

参政党投票者は、第2回目時点ですでに70度付近と高い好感度となっていましたが、選挙戦終盤までこの好感度を維持していた様子もわかります。このフレーズ自体への批判もメディアでは続いていましたが、参政党支持者が「日本人ファースト」への好感度を下げることはありませんでした。

では、「日本人ファースト」とは反対の意味合いをもつ「多文化共生」への好感度の変化も確かめましょう。多文化共生の好感度の変化は、「日本人ファースト」よりは小さい傾向にあります。全体平均で比べると、「日本人ファースト」は50.0度から47.7度の変化、対して、「多文化共生」は45.9度から44.6度でした。

「マスメディア嫌い=SNS好き」ではない

「マスメディア」への好感度はどうでしょうか。こちらも全体平均だけ見れば大きな変化はなく38.8度から38.5度となっていました。投票先の政党別に見ても、変化は大きくないように見えます。共産党投票者ではやや好感傾向に傾いている様子がうかがわれます。

マスメディアに対抗するのがSNSです。第3回目調査では、「SNS」への好感度を新たに調査しました。第3回目調査の「マスメディア」への好感度と並べる形で、「SNS」の好感度の動向を確認しましょう。

SNSへの好感度は、意外にも政党間で大きな違いはなく、大体が「やや反感」〜中間に分布しています。参政党投票者は、SNSに対する反感を持っていないという点で特徴的でした。

マスメディアへの反感が強い政党支持者だからと言って、SNSが好きだということではない。逆に、SNSが嫌いだからといって、マスメディアが好きとも限らない。マスメディアが嫌いな人は、単にマスメディアが嫌いである、ということがわかります。

スピリチュアル・生活保護への好感度は?

他にも第3回目調査では、「スピリチュアル」「生活保護」への好感度も調べました。スピリチュアルについては政党別に大きな違いはないようです。しかし、生活保護については日本保守党投票者でもっとも反感が強く、日本共産党で反感はない、といった違いが見えています。しかし、ここまで取り上げてきたワードと比べると、政党別の好感度の差はそう大きくはありません。

生活保護を受けることは、私たちが生きる上での当然の権利(生存権)です。一方で「恥」と結びつけられ偏見を持たれる実態もあります。参考値である社民党を除き、中間的な位置を超えず、全体として反感傾向に傾いていた点は、深刻に考えるべき結果であるとも言えます。