2026.04.23

2025年10月「社会抑うつ度調査」報告書

2025年10月「社会抑うつ度調査」報告書

接客場面や消費行動での人権・倫理への配慮の実態、多様な属性・特性を持つ人々の社会的受容度を探る

チキラボの基幹調査「社会抑うつ度調査」。この調査では、抑うつ、不安感、孤独感、人生満足度などを指標として、人々の精神的健康の状態とその推移を把握するために定期的な測定を実施。また、精神的健康に関連すると考えられる要因(性格特性や社会情勢など)を明らかにし、有効な対策や提言を行う目的で、さまざまな指標や属性項目を測定しています。

2025年10月調査では、定期的に測定している「精神的健康」と「不公平感」に加え、接客場面や消費行動での人権・倫理への配慮の実態や、多様な属性・特性を持つ人々の社会的受容度、社会問題に関わるワードの認知度など、社会的な情勢を反映した項目を〈テーマ調査〉として設定。今回の調査は、株式会社ネオマーケティングとの共同調査として実施しました。

▶︎ネオマーケティングがリリースした調査結果はこちら

結果のポイント

本調査は、全国の18歳〜70代の1,000人を対象に、接客サービスへの期待、倫理的消費、接客サービス従業員の人権への配慮意識、社会・政治意識、心理状態など多岐にわたるテーマについて尋ねたものである。

  1. 顧客サービスへの期待と現実: 消費者は、クレームへの冷静な対応といった本質的なサービス能力を高く評価する一方、深いお辞儀や過度な謝罪といった形式的・感情的なサービスは不要と考える傾向が強い。特に、従業員への過度な負担を懸念する声が目立つ。しかし、質の高いサービスに対する追加料金(チップなど)の支払意思は極めて低く、8割以上が「払いたくない」と回答しており、サービスへの期待と対価意識の間に大きな乖離が見られる。
  2. 倫理的消費の優先順位: 商品購入時に最も重視されるのは「健康を害する成分がないか」「日本製か」といった自己の安全や利益に直結する要素であった。フェアトレードや労働環境、人権への配慮といった社会的な倫理観も考慮されるものの、その優先度は低い。企業への抗議行動は「不買」が中心であり、SNSでの発信やデモ参加といった積極的な行動は限定的である。
  3. 社会・政治意識の動向: 支持政党を持たない「無党派層」が43.4%と最多を占める。個別の政策では、ストーカー規制法の対象拡大など具体的な被害者救済策への支持は高いが、選択的夫婦別姓や同性婚といった制度変更を伴うテーマについては賛否が分かれ、「どちらともいえない」とする中立層が4割を超える。
  4. メンタルヘルスの現状: 回答者のうち、一定数が不安や抑うつの症状を経験していることが示唆された。特に「疲労感・気力のなさ」(22.1%)、「睡眠の問題」(22.2%)、「心配しすぎること」(20.6%)を週の半分以上経験している割合は高く、約1割(9.3%)が自傷や自殺に関する希死念慮を抱いた経験があると回答している。また、社会の不公正さや孤独感を感じる層も一定数存在し、個人の心理状態と社会認識の関連性がうかがえる。

1. 調査概要

  • 調査方法:WEBアンケート
  • 調査実施日:2025年10月17日(金)~2025年10月24日(金)の8日間
  • 調査実施会社:株式会社ネオマーケティング
  • 調査対象者:同会社のアンケ―トサイト「アイリサーチ」のモニター登録者のうち、18~
  • 79歳の男女1000名。全国の地域・性別・年齢の人口分布に合わせて調査対象者の割付を行った。調査に際し、サティスファイス検出項目を2問設け、いずれの質問にも指示通り回答した人のみ回収。
  • 有効回答数:1000名
項目 内容
調査対象 全国の18歳~79歳の男女
サンプル数 1,000人
性別構成 男性: 49.6%, 女性: 50.4%
平均年齢 50.44歳(中央値: 51歳)
年代構成 18~29歳: 15.0%, 30代: 14.5%, 40代: 19.2%, 50代: 17.5%, 60代: 16.5%, 70代: 17.3%
最終学歴 大学・大学院: 45.9%, 高校: 29.9%, その他:24.2%
婚姻状況 結婚している: 50.5%, 結婚したことはない: 39.5%, その他:10.0%
世帯年収 400万円未満: 31.4%, 400~800万円未満: 28.5%, 800万円以上: 20.5%, 不明・無回答: 19.6%
主観的階層意識 中の上以上:14.1%, 中の中: 36.5%, 中の下: 35.1%, 下:14.3%

 

2. 求められる接客と不要とされる接客

消費者が小売店の接客に何を求め、何を不要と考えているか、またその対価を支払う意思があるかについて分析した。

2.1. 求められる接客と不要な接客

消費者が「必要」「どちらかといえば必要」と考える接客と、「不要」「どちらかといえば不要」と考える接客には明確な傾向が見られた。

必要性が高いと認識される接客:

  • クレーム対応時の冷静な対応: 94.0%が必要と回答。
  • 顧客の怒りを受け止めつつ穏やかに返答: 84.5%が必要と回答。
  • 常に笑顔での対応: 79.3%が必要と回答。

不要性が高いと認識される接客:

  • 自身のミスではないのに過度な謝罪や謙遜: 80.1%が不要と回答。
  • お出迎え・お見送りなどの深いお辞儀: 78.0%が不要と回答。
  • 過度に丁寧な敬語お客の雑談や世間話まで笑顔で応じること: 59.1%が不要と回答。

さまざな接客態度に対する必要あるいは不要と感じる人がどのくらいいるのかを示したグラフです。

2.2. 不要な接客の回答理由:従業員への負担懸念

接客態度を不要とする理由として、従業員への負担を懸念する視点が強く表れている。

  • 自身のミスではないのに過度な謝罪や謙遜が不要な理由: 「従業員に過度な負担をかけているから」(44.6%)が最多。
  • お出迎え・お見送りなどの深いお辞儀が不要な理由: 「従業員に過度な負担をかけているから」(39.9%)が最多。
  • 過度に丁寧な敬語お客の雑談や世間話まで笑顔で応じることが不要な理由: 「従業員に過度な負担をかけているから」(40.4%)が最多。

2.3. 「丁寧な接客」サービスへの支払い意思

質の高い接客サービスに対して、追加料金やチップを支払う意思は極めて低いことが判明した。

  • 「迅速かつスムーズな接客」「笑顔や穏やかな態度での接客」など、ほぼ全ての項目で80%以上の回答者が「サービス料金・チップは払いたくない」と回答した。
  • 専門的な提案やパーソナルな配慮といった付加価値の高いサービスに対しても、支払い意思はほとんど見られなかった。

さまざまな接客に対してサービス料金を支払いたくないとする人の割合を示したグラフです。

3. 店員の行動への許容度とカスタマーハラスメント

店員の行動に対する人々の受容度と、自身のハラスメント行為に関する経験を分析した。

3.1. 店員の行動や容貌に対する人々の抵抗感

抵抗感を覚える店員の行動と、そうでない行動には差が見られた。

タトゥーや私語、スマホ利用には強い抵抗感が示される一方、座っての接客や身だしなみ(髪染め、ピアス、服装)、匿名での勤務については受容度が高い結果である。

店員のさまざまな行動や容貌に対して、どの程度抵抗感を人々が持っているのかを示したグラフです。

3.2. ハラスメント行為の経験度

店員に対する迷惑行為の経験について尋ねたところ、ほとんどの回答者がそのような行為は経験したことがないと回答している。

  • 「店員の態度に5分以上不満を伝える」「大声で注意する」「店員を待ち伏せする」といった10項目の迷惑行為すべてにおいて、86%以上の回答者が「まったく行なったことがない」と回答した。

(ただし、この結果は、社会的な望ましさに基づく回答バイアスの可能性も示唆している点は注意が必要である。)

4. 消費行動と倫理

消費者の購買決定における倫理観や、消費行動を通じた社会運動への参加を分析した。

4.1. 購入時に重視する要素

商品を買い物する際に重視する要素として、以下の傾向が見られた。

  1. 健康を害する成分・物質がないか: 67.6%が重視(かなり+すこし)
  2. 日本産かどうか: 66.4%が重視
  3. アレルギー成分・物質がないか: 45.6%が重視
  4. 適正な労働環境をもつ会社か: 37.7%が重視
  5. 自然環境や動物福祉への配慮があるか: 34.9%が重視
  6. フェアトレード認証があるか: 23.1%が重視

個人の健康や安全、国産品であることが最優先され、労働環境や環境配慮、フェアトレードといった社会倫理的な要素の優先順位は相対的に低い。

商品を購入する時に、さまざまな倫理的な要素をどの程度重視するのかを示したグラフです。

 

4.2. 問題がある商品・企業への反応

企業や商品の不祥事や問題が購買意欲に与える影響には、内容によって大きな差があった。

  • 購入をやめる可能性が高い問題:
    • ねずみ講やマルチ商法 (79.6%)
    • 出品禁止ルールが曖昧なサイトでの販売 (78.0%)
    • 社会的に問題性が指摘された会社 (70.3%)
  • 購入をやめる可能性が低い問題:
    • CMに起用したタレントのスキャンダル (22.1%)
    • CM表現が差別的と問題視された (36.1%)
    • 企業のSNS利用が不適切 (39.9%)

さまざまな問題がある商品・企業に対して、購入をやめる、と回答した人の割合を示したグラフです。

4.3. 企業への応援・抗議行動

過去1年間の企業に対する行動経験は、全体的に低調だった。

  • 応援行動: 「購入支援や寄付を行う」(13.9%)、「レビューで高評価をする」(12.2%)が比較的多い。
  • 抗議行動: 「購入を控える(不買運動)」(10.0%)が最も多く、次いで「レビューで低評価をする」(5.7%)。
  • 電話・メール、示威行動(デモ参加など)といったより積極的な行動は、応援・抗議ともに5%未満と極めて少ない。

企業に対する応援または抗議行動の経験度合いを示したグラフです。

5. 社会・政治に関する意識

政治的立場、政策への賛否、社会課題に関わる言葉の認知度について分析した。

5.1. 政治的立場と支持政党

  • 支持政党: 「支持する政党はない」が43.4%で最多。個別の政党では自由民主党(14.8%)、立憲民主党(7.9%)、国民民主党(6.2%)が続く。
  • 政治的イデオロギー: 自身をリベラル(0)~保守(10)の11段階で評価してもらったところ、「5(中間)」が23.4%で最も多く、次いで「わからない・答えたくない」が26.4%だった。全体的にはやや保守寄りの分布が見られる。

5.2. 人権に関わる政策への賛否

具体的な被害が想定しやすいストーカー規制法改正への支持は高い一方、家族制度や社会のあり方に関わる同性婚や夫婦別姓、外国人支援といったテーマでは賛否が割れ、態度を決めかねる中立層が多い。

さまざまな人権に関わる政策の賛否を示したグラフです。

5.3 社会課題に関わる言葉の認知

社会課題に関わる様々な言葉について、「知らない/聞いたことがある(意味は知らない)/知っていて説明もできる」を尋ねた。

認知が高い語(上位):

  • トランスジェンダー:認知 90.8%(説明できる 43.3%)
  • カスタマーハラスメント:認知 84.7%(説明できる 58.8%)
  • LGBTQ+:認知 72.2%(説明できる 33.0%)
  • 戦争トラウマ:認知 44.7%(説明できる 16.0%)
  • グルーミング:認知 36.6%(説明できる 8.7%)

認知が低い語(下位):

  • イスラモフォビア:認知 6.7%(知らない 93.3%)
  • プレコンセプションケア:認知 6.5%(知らない 93.5%)
  • ハームリダクション:認知 6.2%(知らない 93.8%)
  • パリテ:認知 5.7%(知らない 94.3%)
  • SRHR:認知 5.4%(知らない 94.6%)

社会課題に関わるさまざまな言葉の認知度を示したグラフです。

6. 社会生活における差別意識の「境界線」

特定の属性をもつ人に対して、どの程度近い関係まで受け入れられるか(複数関係)を尋ねた調査項目を分析する。

6.1. 関係の「近さ」による受容の落差

特定の属性、特徴を持つ人々との社会的な関係性について、抵抗のない範囲を尋ねた。「わからない」と回答した割合が高いほど、社会的な距離感が大きいことを示唆する。

16対象の平均でみると、関係が近いほど受容割合が下がる傾向が明確です。

さまざまな特性も持つ人との社会的受容度の平均値を、状況別に示したグラフです。

注意事項(Web掲載向け)

  • 本資料は全体集計(n=1000)に基づく記述統計です。属性別のクロス集計や因果推論は含みません。
  • 設問の性質上、社会的望ましさバイアス等により、実態が過小/過大に出る可能性があります。
  • 引用・転載の際は、出典として本報告書名と調査主体(一般社団法人社会調査支援機構チキラボ・ネオマーケティング)を明記してください。