2026.02.20

中道改革連合の「大敗」とはなんだったのか?  立憲支持者の離脱要因を探る

中道改革連合の「大敗」とはなんだったのか?  立憲支持者の離脱要因を探る

高市政権の成立とともに、公明党が自民党との連立を離脱。今回の衆院選直前に立憲民主党と公明党が、新たに中道改革連合を結成しましたが、この衆院選、結果は「大敗」となりました。

なぜこれほどまでに「負けたのか」。すでにさまざまな情勢調査から、公明党支持者の票はある程度確保できたものの、立憲民主党支持者を束ねきれなかったことなどが報じられています。では立憲支持者(注1)が中道を選択しきれなかった背景に、どのような要因があるのでしょうか。

チキラボが実施した衆院選における有権者の政治意識継続調査。この調査の第1回と第3回の回答を使って分析します。

元立憲支持者の約4割を取りこぼした中道改革連合

2025年参院選、その前の2024年衆院選で比例区で立憲民主党に投票した層と、投票しなかった層に分け、今回の衆院選挙の投票先を確認したのが以下のグラフです。

参院選立憲投票者別の2026年衆院選投票先

前回衆院選立憲投票者別の2026年衆院選投票先

いずれも、立憲民主党に投票した層の約6割が今回の衆院選で中道改革連合に投票し、残り4割は他党へ投票、または投票に行かないという選択をしています。

そして、2025年参院選で立憲民主党に投票した人を起点に、この人たちが2024年衆院選、そして今回の衆院選でどこに投票したかを示したのが次のグラフです。

2025参院選立憲投票者の動向

今回の衆院選において、過去選挙で立憲民主党に投票してきた層が分散し、中道改革連合投票層と、非投票層に分かれた様子が確認できます。

立憲支持者はどこに行ったのか

2025年の参院選で立憲に投票した人のなかで、今回の衆院選で中道以外に入れた方の投票先も確認しましょう。

もう一度、一番最初に掲載した帯グラフ(2025年参院選で立憲投票層/非投票層別の今回衆院選での投票先政党分布)をご覧ください。

自民党に入れた人は小選挙区では7.6%、比例では5.3%いることが確認できます。他にも国民民主党(小選挙区5.3%、比例4.5%)や、参政党(小選挙区3.8%、比例2.3%)、比例区では共産党(5.3%)やチームみらい(6.8%)への一定程度の投票が確認できます。立憲票が特定政党に流れたというより、それまで束ねていた層がばらけた様子が見てとれます。

2025参院選立憲投票者別、年代別の衆院選中道投票者割合

年代別にも確認すると、

  • 2025年参院選で立憲民主党に投票しなかった層:高齢層ほど中道に投票しやすくなる傾向が確認できる
  • 2025年参院選で立憲に投票した層:統計的に有意な年代別の差は確認できなかった。
    (※今回の分析では、2025年参院選での立憲投票者の数が全体的に小さく、さらに年代別に分けると小さくなってしまうため、分析上の限界から、有意差が確認できなかった可能性も含まれます。)

中道投票者の27.6%は前回選挙で他党投票・無投票層

2026衆院選、中道投票者の参院選時の投票先政党

逆に、今回の衆院選で中道に投票した層全体では、過去の投票先構成はどのようになっているのでしょうか。

立憲民主党、公明党に投票していた人たちは合計して72.5%です。残りの27.6%(注2)は、元・立憲支持でも公明支持でもない人たちで構成されています。「立憲や公明なら入れないが、中道なら入れる」という有権者も一定数確認できます。

元立憲支持者にとって中道投票の障壁となったのは何か?

では元立憲支持者で中道に投票しなかった人にとって、何が障壁となったのでしょうか。以下6つの要因に焦点を当て、分析してみます。

  • 「集団的自衛権の行使容認」「原発再稼働の容認」
    • 中道改革連合の結党にあたり、集団的自衛権については「集団的自衛権の違憲部分の廃止」との主張から「合憲」との立場に、原発政策については「将来的に原発に依存しない社会を目指す」とする方針ではなく再稼働容認との立場に注目がされました。こうした立憲民主党との政策スタンスの「違い」が 元・立憲支持層に十分に理解・受容されなかった可能性はあるのでしょうか。
  • 党首の好感度
    • 野田氏はもともと好感度が高い方の政治家ではなく、斉藤氏は知名度が高い政治家ではありません。こうした党首の影響はあったのでしょうか。
  • 創価学会の存在
    • 「結党時から、「創価学会票」と「創価学会忌避」がどのようなバランスになるのかが注目されていました。立憲が公明と組んだ背景に、創価学会員の組織票への期待もあったはずです。この戦略は功を奏したのでしょうか。
  • 「中道」を打ち出しすぎた影響?
    • 中道は、「右傾化する政治」の歯止めとなることをアピールして結成しましたが、左派(リベラル)勢力とも距離をとる立ち位置となりました。その結果、リベラル派を自認する人々の離脱を招いた可能性はあるのでしょうか。
  • メディアの影響?
    • 選挙期間中に接した情報によって、党首や政党の好感度となんらかの関連がる状況が示唆されています。メディアの影響は確認できるのでしょうか。※参考記事

2025年の参院選の比例区で、立憲民主党に投票した人たちだけに注目し、今回の衆院選の比例区で中道改革連合に投票したか否かを分析。 先に挙げた6つのこれらの要因のうち、ど の要因が関連しているのかを明らかにするため、二項ロジスティック回帰分析という方法を用いました。

分析できる回答者数が125名と限られているため、この記事では関係を確認したい要因を厳選し、分析しました。

野田氏と創価学会への反感が強いほど、中道への投票行動が抑えられる

中道投票影響要因分析

分析の結果、野田氏への好感度と、創価学会への好感度の2つの要因が、統計的に有意な影響を及ぼしていることがわかりました。それぞれについて、好感度が高まると、中道に投票しやすくなる、という結果です。逆に、反感が強いほど(好感度が低いほど)と、中道に投票しにくくなる、ということでもあります。

野田氏への好感度は、オッズ比=1.041/1度になります。今回の調査では好感度を10度刻みで質問しているため、それに当てはめて説明すると、好感度が10度高い人では、投票オッズ(投票する確率としない確率の比。投票する「勢い」を表したような数値)が約1.5倍(注3)になることを意味します。創価学会への好感度も10 度高まると投票オッズは約1.3倍となります。

他方で、集団的自衛権の行使容認への賛否、原発再稼働容認への賛否、そして左右イデオロギー上の自身の立ち位置、この3つの要因と中道への投票行動との関連は、今回の分析の範囲では明確な関連性は確認できませんでした。(分析に使った回答者数の数が少ないため、本当に関連していないのか、実際は関連しているが統計的に検出できなかった、というどちらの可能性も含んでいます。そのため、慎重な解釈が必要となります。)

中道がリベラル層の票を取り損ねたのではないか、という解釈もありますが、元立憲支持者の間では、左右イデオロギーの立ち位置の違いが、中道に投票するか否かに大きな影響は与えなかった可能性が見えます。

安保・原発関連の政策転換によって支持を止めた人も中にはいるはずですが、全体としては、多くの人の投票行動を左右する大きな要因といえるほどではないのかもしれません。

また中道改革連合の応援・評価系動画の目撃経験が必ずしも投票/非投票につながったわけではないことも、この分析結果から示唆されます。参院選調査の分析では、立憲支持層はYouTubeなどの動画からの選挙情報取得時間は短い傾向にありました。SNSやYouTubeなどで中道に対するポジティブな動画に触れたとしても、そもそも信頼度の低いメディアであるために、影響がなかったのかもしれません。

元立憲支持者と元公明支持者では「創価学会」好感度に大きな開き

有意な影響要因となっていた「創価学会」好感度。2025年7月の参院選で、立憲民主党と公明党に投票した人の「創価学会」への感情温度に差はあったのでしょうか。

  • 比例区が立憲民主党だったグループ 25.6
  • 比例区が公明党だったグループ 58.5

公明党投票者が創価学会に対して好感度が高いことは予想されることですが、立憲投票者との温度差は倍以上です。

立憲支持者のなかで、「創価学会」への好感度が低いほど、今回の衆院選・比例で中道に投票しにくくなる傾向があったことは、先ほど分析で示したとおりです。では「創価学会」要因は、選挙序盤段階で、どのくらい影響があったのでしょうか。

創価学会への感情温度を、回答者数が同程度になるように「反感が強い(0度)」グループと「反感がやや強い(10-30度)」グループと、「反感が弱い(40度以上)」グループの3つに分けました。

2025年の参院選比例区で立憲民主党に投票していた人について、この「反感が強い」グループと「反感がやや強い」グループ、「反感が弱い」グループそれぞれの、今回の衆院選・比例区の投票予定先政党の選挙戦序盤の割合を、第1回目調査から確認しましょう。

創価学会好感度別中道投票予定割合

「創価学会」に対する反感が強いグループほど、今回の衆院選の比例区投票先に中道改革連合を選択している人の割合が、すでに選挙戦序盤の段階で低くなっていたことがわかります。

一方で、「創価学会」に対する反感が強いグループでも中道改革連合を選択していた人は4割程度いました。このことは、中道改革連合に投票しないという選択が、「創価学会」忌避だけでは説明できないことを示しています。

結局、中道は「中道票」を取れたのか?「左寄り」自認の有権者で伸び

改めて、中道改革連合の「中道票」を取りに行くという戦略について、確認しましょう。

グラフには、選挙戦序盤の調査段階で、「中道改革連合を投票先とする予定」と回答した人の割合と、最終的に中道改革連合に投票した人の割合を並べました。

政治的立ち位置別の中道投票予定・投票割合

自身の政治的立ち位置が「中間」と自認している人の中で、中道に投票予定と実際の投票に投票した人の割合を比較すると約5ポイント増加しました。一方で、増加幅が大きいのは、左寄り/リベラルに自分自身を位置付ける人たちで、特に、「2」〜「4」の人たちの中で、伸びたことがわかります。

次のグラフは、自身の政治的立ち位置別の比例区投票先政党の分布です。

自身の政治的立ち位置別投票先政党

確かに、「2」〜「4」に自身を位置付ける有権者のグループで、中道改革連合への投票割合が大きくなっています。しかし、その割合は多くて4割程度。「中間」では自民とほぼ同じ割合です。中道は「中道票」も「左派/リベラル票」もどちらも取り損ねたことが確認できます。

中道改革連合の「大敗」とはなんだったのか

この記事では、中道改革連合に投票した人々の動向を、特に元立憲民主党支持者に注目し分析してきました。元立憲支持者にとって中道改革連合への投票を躊躇させる要因の一つに野田氏や創価学会への好感度が関係している可能性が、分析からは示唆されました。

ここで触れた要因で説明できる範囲は限定的ではありますが、「この衆院選はなんだったのか」、「中道とはなんだったのか」を冷静に、少しずつ探る営みを続ける必要があります。

選挙結果に現れた「民意」は複雑です。「XXのせいであの政党が勝った/負けた」という民意解釈はシンプルで魅力的ですが、特定の物語(ナラティブ)の一人歩きにもつながります。有権者として今後の政党政治を考えるためには、一つ一つ事実を確認し、丁寧に知見を重ねていくことが必要となりそうです。

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注1) この記事では例えば「立憲支持者」といった表現を使用している場合がありますが、具体的には各党へ投票した人のことを指しています。厳密には投票先政党と支持政党が重ならない場合もありますが、この記事で主に使用しているのが比例区投票先の回答であり、比例区の投票先は支持政党の状況が反映されやすい投票行動であると想定されているため、文脈に応じて、支持者と表現している場合もあります。

注2)小数点第2位で四捨五入している数値を足し合わせているので100%にならない形になっています。

注3)これは好感度1度あたりのオッズ比を10乗して得られた値です。創価学会好感度のオッズ比についても、同じく10乗して得られた値です。