自民党が今国会での成立を目指し、国旗損壊罪創設について議論を加速させています。
2026年5月13日には、SNSなどに国旗を損壊した動画や画像を投稿する場合などにも処罰対処とするといった案まで浮上しました。自民党内からも、「規制過剰だ」との懸念意見が出たため、了承こそ見送られたものの、「絵画や映画作品等での国旗も対象にするか」といったことも論点化されてもおり、表現の自由の侵害が大きく懸念されます。
2026年4月10日〜22日に実施したチキラボの「社会抑うつ度調査」では、国旗損壊罪の賛否についても調査しました。

「国旗損壊罪」全体の賛否
全体の賛否を確認しましょう。
(「あなたは次のような政策案についてどのような意見をお持ちですか。あなたの意見にもっとも近い回答をそれぞれ選んでください。(各項目の内容自体がよくわからない場合は「どちらともいえない」を選択してください。)」における「日本国旗を傷つける行為に刑事罰を与える「国旗損壊罪」をつくる」に対する回答)
- 反対:10.9%
- やや反対:8.6%
- どちらともいえない:38.3%
- やや賛成:17.2%
- 賛成:22.3%
- 答えたくない:2.7%
最も多いのが態度保留層で約4割となっています。そしてその次に賛成派(賛成+やや賛成)39.5%、反対派(反対+やや反対)19.5%です。
性別・年代によって異なる賛否の傾向
しかし性別別、年代別、支持政党別に賛否の分布を確認すると一定程度の差が生じていることがわかります。
男女別で見ると、男性の方が賛成派が多く、一方女性は約5割が態度保留です。その結果、反対派も男性が多い形となっています。

さらに年代も加えて、分布の差を確認しましょう。

態度保留層は全年代で男性が女性を下回っています。そのため、反対派の割合が最も多かったのは男性70代のグループですが、賛成派も他年代に比べ比較的多くなっています。
特徴的なのは男性30代グループで、反対派が著しく少ない一方で、態度保留層も他年代の男性と比べて多く、「答えたくない」が10.8%にのぼっています。
一方、女性は最も若い18歳〜29歳グループで態度保留層が少なくなっている上に、反対派の割合も他世代と比較して多くなっている点が注目されます。
比例区投票先政党別に見る国旗損壊罪への賛否
2026年2月の衆院選挙の比例区投票先政党別に分布の差を確認します。

支持政党ごとに、賛否の分布が大きく違うことが、第一に確認できます。参政党、日本保守党への投票者は、賛成派が6割〜8割に上り、圧倒的多数となっています。自民党に先立って、参政党は2025年10月に国会に国旗損壊罪に関わる刑法改正案を国会に提出しています。ただ、そのような参政党投票者であっても、4割は反対派か、態度保留層のいずれかとなっている点は意外かもしれません。
続いて賛成派が多数にのぼるのが自民党投票者です。約6割が賛成派となっています。
一方、国旗損壊罪に前のめりな日本維新の会投票者では、賛成派は約4割で、国民民主党投票者より少なく、チームみらい投票者と同程度です。反対派も約2割おり、維新支持者と維新政治家の、国旗損壊罪に対する温度差がうかがわれます。
反対派が最も多いのが中道改革連合投票者、ついで日本共産党となっています。「反対」だけでみれば、共産党投票者が最も多い結果です。
何が「罪」になるのか—立法事実と保護法益が不透明なまま進む議論
自民党のプロジェクトチームでは、「国旗の損壊はそのやり方によっては国旗を大切に思う一般的な国民の感情を害することになる」と主張し、「わが国でも国旗を損壊するような事例が発生していること等から、将来に向かって抑止する必要がある」と、国旗損壊罪の法制化を図るための立法事実が存在すると考えられる、とまとめています(自民党HP 2026年4月28日「国旗の損壊等に関する制度検討PT 議論の整理と論点の取りまとめ」https://www.jimin.jp/news/information/213121.html)。
日本国旗は象徴的存在であるからこそ、さまざまな意見や思想、心情を伝えるためのアイコンになってきました。日本国旗を取り入れたアート作品もいくつも存在し、日本社会の問題を考えるきっかけを与えてくれることも多いです。
報道では、「表現の自由」を不当に制約しないため、という理由で、意図や目的など主観的要素ではなく客観的な行為で判断する方向であると伝えています。しかし、どのような行為を「損壊、除去、汚損」というネガティブな扱いとするか、判断する側の見方に左右されてしまいます。
今回の調査で目立ったのは、態度保留層のボリュームです。この国旗損壊罪は、現時点では何が「罪」になるかを、国民側はよく理解していません。内容次第でまた、賛否比率なども変わる可能性はあります。
少なくとも現状では、国旗損壊は、「国論が二分するテーマ」である以前に、多くが態度保留しており、意見形成が固まっていない状況です。また、本調査では他の政策への賛否も聞いています。例えば先の衆議院選挙で争点になった消費税減税については、約5割の方が賛成派(「物価高対策として消費税を減税する」に対して「やや賛成」19.0%、「賛成」30.5%)となっています。「どちらともいえない」という態度保留層も、国旗損壊罪と比べ少なくなっています(30.8%)。物価高対策などと比べ、国旗損壊罪が優先順位の高い法案であると捉える人も少なそうです。
立法事実と保護法益が不透明な、拙速かつ侵犯的な法制定は、多くの禍根を残すことになります。思想的目配せに基づく勢い任せでの法案可決とならないよう、冷静な議論を強く求めます。