2026.09.18

放送業界における横断的な労働環境調査の実施に関する要望 および調査協力の申し入れ

2026年9月16日、東京大学大学院 情報学環 教授・田中東子研究室よの連盟で、日本民間放送連盟(民放連)へ向けて「放送業界における横断的な労働環境調査の実施に関する要望および調査協力の申し入れ」を送付いたしました。以下に提出した要望書の全文を掲載いたします。


2026年9月16日

一般社団法人民間放送連盟 会長 早河洋 殿

東京大学大学院 情報学環 教授・田中東子研究室
一般社団法人社会調査支援機構チキラボ 代表 荻上チキ

放送業界における横断的な労働環境調査の実施に関する要望
および調査協力の申し入れ

平素よりお世話になっております。貴連盟におかれましては、放送業界の発展と健全な職場環境の構築に向け、日頃より多大なるご尽力をなされていることに敬意を表します。また、本年3月に私どもが送付いたしました要望書に対し、ご多忙の折に誠実なご回答をいただきましたこと、改めて深く感謝申し上げます。

貴連盟からのご回答を拝見し、ハラスメントや人権侵害を経営の最優先事項として位置づけ、「民放連・緊急人権アクション」(2025年5月)の決定やガイドブック作成、アンケート調査の実施、ならびに各社への自主調査の呼びかけなど、多角的な対策を講じられていることを確認いたしました。各社においても人権デュー・デリジェンスの実施など体制整備が進みつつあることは、大変心強く存じます。また、貴連盟内に設置されたジェンダー平等推進プロジェクトによる提言も、この動きを後押しする重要な取り組みであり、敬意をもって受け止めております。

しかしながら、人権侵害やハラスメントの被害に遭われた方々の実態を把握し、その被害の存在を認めることを土台とした取り組みでなければ、労働環境は決して安心できる状況にはならないと考えます。

私どもの調査では、女性回答者の4割が性的誘いを受け、約1割が不同意性交を含む重大被害を経験しているという深刻な実態が浮き彫りになり、これらの被害が長年にわたり業界に根付く構造的な問題であることが明らかになっています。

各社が個別に被害状況の把握に努めてきたことや、改めて自主調査が計画されつつあることは環境改善に向けた大きな一歩と受けとっておりますが、それだけでは実態把握に十分ではありません。

第三者的な立場である貴連盟が、匿名性を担保し、同一指標で、そして民間事業者を横断的に、さらに労働形態横断的に調査することにより、業界としての被害実態をより正確に把握することができるのではないでしょうか。

第三者による横断調査であれば、各社の調査結果を再点検することが可能になります。各社の調査では、特定されるリスクや報復のリスクから回答を忌避する方も、匿名性が高まる第三者の横断調査であれば、比較的安心して回答ができるでしょう。また各社の調査では漏れてしまうフリーランスの方々など、労働現場の周辺的立場にある方々の声も、捕捉できるのではないでしょうか。

他業界に目を向けますと、本年4月には日本新聞協会が主導し、働き方やジェンダー不平等を可視化する横断調査の公表も行われました。

民放連や各社が推進しようとする人権デュー・デリジェンスやその他の対策が推進されるためには、すでに被害に遭われた方々が、業界・組織に対する「公正感覚」を取り戻すことが必要であると考えます。そのために、民放連による放送業界横断調査の実施を、改めて要望いたします。

【調査協力の申し入れについて】

上記の業界横断調査を実施されるにあたり、私ども東京大学・田中東子研究室およびチキラボは、もし貴連盟からの呼びかけ・ご要請がございましたら、学術的・専門的知見を有する第三者機関あるいは協力機関として、調査設計・実査、分析に関してサポート・協力させていただく用意がございます。

現在進められている各社・貴連盟の取り組みが一過性のものに終わらず、業界全体の不可逆的な体制として定着するためには、横断調査が不可欠であると確信しております。 何卒、本要望および協力の申し入れにつきまして、前向きなご検討を賜りますようお願い申し上げます。

私たちは、「誰もが尊厳を守られながら働ける放送業界」を実現するため、歩みを止めることなく活動を続けてまいります。

つきましては、本年9月に予定されております貴連盟会長の定例会見の場などにおきましても、本件に関する貴連盟の見解や、横断調査に向けた前向きなご議論がなされることを強く期待しております。

何卒、本要望および協力の申し入れにつきまして、ご検討を賜りますようお願い申し上げます。

なお、大変恐れ入りますが、本件(横断調査の実施に関するご見解等)につきまして、誠に勝手ながら10月16日(金)までにご回答くださいますようお願い申し上げます。

また、本要望書および貴連盟からのご回答につきましては、社会的な関心の高さにも鑑み、私どものウェブサイトにて公開させていただく予定でございます。あらかじめご了承くださいますようお願い申し上げます。

末筆ではございますが、貴連盟の益々のご発展をお祈り申し上げます。

どうぞよろしくお願いいたします。

以上