チキラボ実施の衆院選調査。選挙戦序盤で、高市氏の好感度はすでに高い状態にあり、それが、YouTubeから選挙情報を取得している層でとくに高い傾向にあることを分析した記事を公開しました。
本記事は、高市氏の好感度について、前記事に続き、衆院選の投開票が終了した後に実施した第3回目の調査も使って、高市氏の好感度と関連がある要因について、分析をしていきます。
参院選後から衆院選開始までに高市好感度が急速に高まった可能性
高市総理が1月の通常国会を前に突如衆議院を解散した理由に、自身の支持率の高さがあったと言われています。高市政権発足後、内閣支持率は高水準を維持し続けました。例えばNHKの世論調査で内閣支持率は2025年9月石破内閣の39%から、高市政権発足後の11月には66%に急上昇し、2月調査では58%とやや下がっているものの、依然として高水準となっています。
支持率の上昇と並行して、高市氏への好感度も政権発足と同時に上昇していた可能性が推測されます。
チキラボが2025年7月20日の参院選投開票日直後に実施した、東京都の有権者(n=410)を対象とした調査では、高市氏に「非常に好感が持てる」と回答した人が6.3%(n=26)、「少し好感が持てる」と回答した人が21.7%でした(n=89)。東京都在住の限られたエリアを対象としているので、、全国の有権者の傾向とずれがある数値ではありますが、それほど好感度が高いとは言えない状況がありました。
知名度も同様です。東京都の有権者の9.5%は高市氏を「知らない」と回答していました。チキラボによる全国の有権者に対して行った衆院選での第1回調査では、「知らない・答えたくない」が2.2%だったことと比べると、参院選直後の高市氏の知名度は、現在よりは低かったことがうかがえます。年代別に見るとさらに顕著で、参院選直後の東京都有権者のうち、18〜20代は18.8%が、30代は14.5%が「知らない」と回答していました。
一方で、高市氏は、政権発足前から保守層を中心に根強い人気がありました。例えば東京都有権者調査のなかで参政党に投票した方に行ったチキラボの調査では、参院選直後の段階で、高市氏に対する好感度は次のような分布になっていました。「非常に好感が持てる」「好感が持てる」合わせて59.0%です。
都議選参政党投票者(n=278)

つまり、参院選直後から政権発足、そして衆院選にかけて、認知度が高まり、そして保守層だけではなく多くの人を取り込んで好感度が高まった、という動きが生じていた可能性があります。
なお、政権発足以降、高市氏が認知度を獲得したのは、政権与党でありしかも総理大臣となったことからある程度自然なことだと思われます。総理大臣となればメディア露出は高まります。前回参院選調査時に総理大臣だった石破茂氏について、当時「知らない」と回答した人の割合は3.7%でした。この認知度は小泉進次郎、プーチン大統領なみで、他の党首のなかで最も高い認知度です。高市氏の場合には他にも影響要因が存在する可能性もあり、この点はさらに分析が必要でしょう。
衆院選期間中の好感度の変化は?
選挙戦序盤の段階で他の党首・政治家を引き離し、高い好感度を獲得していた高市氏。その状況についてはこちらの記事を参照ください。
高市氏の好感度は、選挙戦期間中にも高まり続けたのでしょうか。
感情温度という変数を使った好感度の平均値から確認してみると、衆院選序盤1回目調査時は平均53.8度(「知らない・答えたくない」と回答した人は除いた)でしたが、衆院選後3回目調査では平均54.1度でさほど違いはありませんでした。1時点目と3時点目にかけての温度変化の分布を確認してみると、好感度を変化させなかった人(値が「0」の回答者)が50%近くに上り、0を中心に、好感度を上げた人と下げた人が左右に分かれる形となっています。
感情温度の説明はこちらの記事を参照してください。

選挙期間中、好感度がさらに高まったというよりは、高止まりが実態。そして少し好きになった人もいれば、少し嫌いになった人もいる、という状況のようです。
選挙戦終盤に好感度が高かった人はどのような人か
選挙期間中に好感度がさらに高まる、ということはなかったとしても、好感度が高い状態を維持した高市氏。ではこの選挙戦終盤での好感度が、どのような要因と関連していたか、すでに関連があることがわかっている回答者自身の政治的立ち位置や政治的な態度、外国人脅威意識要因、メディア要因に焦点を当て、分析を進めます。
ここでは、投票後に実施した第3回目の調査で調べた、高市氏の好感度を測る感情温度を従属変数とした、重回帰分析という手法で、検証していきます。
分析に使用した変数は以下のとおりです。専門的な説明のため、結果を先に知りたい方は「分析結果のポイント」まで読み飛ばしていただいても大丈夫です。



高市氏は、保守派に支持される傾向がある点は、先ほど指摘した通りです。そこで、分析にはそのような政治的要因を選びました。また、外国人政策への厳格化を示し、支持を集めた高市氏。外国人が日本を脅かしているという象徴的脅威認識要因も関係するのか検証してみましょう。
メディア要因として既存メディア、そして新興メディアの双方の影響をみてみましょう。選挙期間中は高市氏を好意的に映し出すSNS上の動画の存在が大きく注目されたため、好意的動画接触の要因、そして自民党の動画やCM動画、あわせて主要野党となった中道改革連合の動画への接触要因も検討してみます。
そのほか、一般的に政治的態度に影響を与えると考えられる、社会経済的な要因や属性的要因に加えて、過去の投票行動(時期的に離れており、かつ同じ制度である2024年衆院選時の投票行動を使用)や衆院選公示段階での好感度が同じ人どうしを比べた時に、どのような要因が終盤の好感度に影響を与えているのかを分析していきます。

分析結果のポイントは以下のとおりです。
選挙戦序盤の高市好感度が同じ人を比べずに(を統制せずに)分析した場合(モデル1)
- 選挙戦終盤の高市好感度と正の関連がある要因
- 自分自身の政治的立ち位置を保守側に位置付ける
- 「石破茂」好感度が低い
- 外国人が日本を脅かしている認識が高い
- 高市政権応援動画を目撃した経験があった
- 選挙期間中に自民党の動画やCMをみた時間が長い
- 2024年衆院選も自民党に投票した
※10%の有意水準ではあるが、中道改革連合の動画・CMの視聴時間が長い層ほど、好感度が低いという関連も。
選挙戦序盤の高市好感度の影響が同じ人を比べて(を統制して)分析した場合(モデル2)
- 選挙戦終盤の高市好感度と正の関連がある要因
- 自身の政治的立ち位置を保守側に位置付けている
- 2024年衆院選時に自民党に投票した層
- 選挙戦終盤の高市好感度と負の関連がある要因
- 新聞で選挙情報を取得する時間が長かった人
- 自民・中道動画および高市政権応援動画の接触要因の影響は消える
分析の結果、選挙戦終盤の高市好感度は、選挙戦序盤で高市好感度が高いかどうかでほとんど説明できることがわかりました。高市政権応援動画の目撃や自民党の動画接触時間の長さ、中道改革連合の動画への接触時間の短さが選挙戦終盤の高市好感度と正の方向に関連しているように見えましたが、選挙序盤ですでに高市氏を好きな人たちが、高市氏に好意的な動画や自民党の動画に触れていたため、終盤での好感度と関連があるように見えていました。
対して、選挙戦序盤の高市好感度が同じ人を比べた場合に、メディア要因としては唯一、新聞で選挙情報を取得する時間が長かった人ほど、選挙戦終盤の高市好感度が低い傾向が確認できた点は注目したいところです。
また、保守層や、2024年衆院選の自民投票層において、高市氏が人気を盤石にしており、こうした層においては、選挙戦序盤の高市好感度の状況にかかわらず、選挙戦終盤の好感度と正の関連があることが確認できました。
選挙期間中、自民党のCM動画の再生回数や、高市氏に関するポジティブなコンテンツが収益化されやすい状況がSNS空間に広がっていたことなどは、既に報道されている通りです。しかし、こうした動画への選挙期間中の接触が高市好感度を高めたとは言い難い結果が今回の調査では得られました。
選挙期間の「高市旋風」なるものは、選挙前に高められた高市好感度を土台としていたことが示唆されます。
「外国人問題」を燃料にした高市人気とそこに便乗するSNS、既存メディアができることは?
第1次高市政権発足から衆院選開始までの期間、何があったのか。改めて振り返ると、先の参院選で「外国人問題」が争点化し、それを受けた高市政権では外国人政策の「厳格化」を推進、台湾有事に関連する発言でも撤回しないなど、「外国勢力からの危機」を前提とした高市氏の姿勢が注目されていました。「外国人によって日本が脅かされている」という危機意識を持つ有権者にとっては、こうした高市氏の振る舞いが受け入れられた結果、好感度が高まっているのかもしれません。
選挙戦序盤での高市好感度を統制しなかった場合の分析(モデル1)で、外国人脅威意識は有意な関連性が確認できました。しかし、序盤の高市好感度の影響を統制すると、この関連はなくなりました。つまり、外国人脅威意識を持っている人が選挙前にすでに高市氏への好感度を高めていたわけです。
本分析の範囲をやや飛び越えて解釈すれば、参院選で火をつけられた「外国人問題」があり、それらを燃料に好感度を獲得したと思われるのが高市氏です。その「高市人気」で収益を得ようと画策したSNS空間。そしてその高い好感度があるなかで、対抗馬不在の状況、さらには比例代表並立制という選挙制度が利する形で「自民党の大勝」となったのではないでしょうか。
注目したいのは選挙期間中に新聞から選挙情報を取得する時間が長かった層ほど、選挙戦序盤の高市氏に対する好感度を統制しても、選挙戦終盤の高市氏好感度が低い傾向があった、という関連です。SNS上の高市政権や自民動画接触は、もともと高市氏に好意的な人が触れるメディアであったのに対し、新聞の場合は有権者の高市氏への好感度に影響を与えるメディアとして機能していた可能性がうかがえます。
消費税減税や積極財政を打ち出したり、「円安で外為特会ホクホク」発言などを行う高市氏に対し、日経新聞が非常に批判的な論調だったこと、高市氏の応援演説で消費税減税の主張が「封印」されていたことなど、新聞各社は批判的な報道を行っていました。
政治コンテンツに収益性が期待できてしまうSNS空間での巨大な情報群が一方に存在している今、既存メディアの存在価値が逆に明らかになった選挙ともいえるのではないでしょうか。