参政党を支持しているのはいったいどんな人々なのか?
2025年7月の参議院選挙で「躍進」した参政党。結果は、野党第一党の立憲民主党とならぶほどの得票率で、選挙区では約920万人が、比例区では740万人が参政党に投票しました(注1)。
その直前に行われた2025年6月の東京都議会議員選挙から、参政党への関心は高まっていました。そして都議選の直後から、参政党の支持者像やその動機をめぐっては、さまざまな「語り」がありました。例えば以下のようなものです。
- 初めて選挙に興味を持ったような人たちが参政党に投票した
- 支持者には、40〜50代の女性が多い
- 参政党の医療への態度から、オーガニック好きのリベラル層が投票した
- 参政党の政策を理解して投票している人は少ない
それに対して、チキラボでは東京都議会議員選挙直後に、東京都の有権者に対して調査(2025年都議選参政党投票者調査)を実施し、1〜4を検証。結果は、レポートとして発信してきました。ここでも簡潔に振り返ります。
参政党支持者 Q&A
Q. 初めて選挙に興味を持ったような人たちが参政党に投票したのか?
A. 従来から政治に参加してきた層が大半
過去の投票行動を確認すると、参政党投票者の約75%が、都民にとっての一つ前の選挙にあたる東京都知事選挙でも投票しています。他党の候補者に投票した人たちと比べてもこの割合は平均的か、わずかに多くなっています。
その投票先は現職の割合が低く、新人への投票行動が目立っており、より強い政治意識を持っていることもうかがわれます。特に、石丸伸二氏、田母神俊雄氏、桜井誠氏といった候補者への投票行動が目立っていました。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
Q.支持者には、40〜50代の女性が多いのか?
A.40代、50代が際立って多くはなく、投票者の6割は男性
他党候補者への投票者と比べると、参政党投票者は40代以下が半数を占めており、比較的若年層に偏っていることが確認できます。また、投票者は6割男性、4割女性という構成で、他党と比べて、女性が多いというわけではありません。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
Q. 参政党の医療への態度から、オーガニック好きのリベラル層が投票したのか?
A. 反ワクチンよりも反外国人意識の方が強く、極めて右派的自認が高い傾向
参政党といえば反ワクチンを訴えていた政党でもあります。調査では都議選で参政党に投票した方に、その理由も回答してもらいました。『ワクチンなどの医療観に共感した』人は「とてもあてはまる」15.4%、「まああてはまる」20.8%で4割弱の人が該当します。低くはない割合ですが、それ以上に選択されていたのが『日本をなめるな』『日本人ファースト』との訴えに共感した」で、「とてもあてはまる」43.6%、「まああてはまる」27.4%で、7割近くに上ります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください
Q. 参政党の政策を理解して投票している人は少ないのか?
A. 参政党の政策や理念を「しっかり」と理解して投票する傾向
当時参政党が掲げていた「日本人をなめるな」や「日本人ファースト」に共感し、投票した人の割合が7割近く存在することをはじめ、「訴えている政策の内容が、自分の考えと一致したから」投票したと回答した方が8割。また、参政党についても「党の考え方が愛国的だと思ったから」について、68.5%が賛同しています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
参政党支持者は「見捨てられてきたアンダークラス」なのか?
参政党が日本の「極右政党」であるとの見方が定着しています。例えば排外主義に詳しい早稲田大学の樋口直人氏は、欧州の「極右政党」には次の2つの特徴があると指摘しています。
- 主流保守勢力よりも強硬な右派的主張をしている政党
- その政策・主張に排外主義やナショナリズムを含んでいる
確かに、参政党の保守性は憲法草案を見れば明らかです。天皇を中心とする国づくりへの回帰を主張し、「教育勅語」を復活させ、学校教育で教えるべきとの立場を憲法草案に明記しています。自民党でも一部の保守議員からたまにこうした主張が漏れ出ることがありますが、参政党ほど大っぴらではありません。そしてその主張内容が排外的で、ナショナリズムを高揚させるものかは、引用した樋口氏によって詳しい解説があります。なお、チキラボの調査データでは、参政党支持者は自民党支持者より、自信の政治的立ち位置を「右」寄りに自認する人が多いことにも注目が必要です。
そのため「極右政党」が台頭する欧米の政治変動についての議論と重ね合わせて、「なぜ参政党のような極右政党が日本でも支持されたのか」議論が活発化しています。
アメリカでのトランプ支持の背景に、白人労働者階級の政治的不満が指摘されてるのと同様に、日本でも「中間層の没落」によって、社会・経済的に「見捨てられた人々」の不満が爆発し、参政党支持に結びついたのではないかとの見方が提示されることがあります。
つまり、客観的な指標で判断できるような「経済的・社会的な苦境」にある人々が支持しているのではないか、という説です。
しかしチキラボデータからみえる結論は、参政党に投票しなかった人と比べて、「参政党投票者の方が、経済的に不安定な状況の人が多い」とは言えない、ということです。むしろ今回の調査に回答した参政党投票者は、相対的に安定した層に属する方が多い結果となっています。
そのことをチキラボの2025年参院選をめぐる有権者の政治意識調査(参院選期間中〜投票後に実施した3回の継続調査のデータ)を使って確認していきましょう。
ー経済状況は?
世帯年収200万〜300万円未満の層が、参政党に投票しなかったグループと比較すると多い点が目立ちますが、500万円以上の世帯年収にある人は参政党投票者グループの方が多くなっています。

ー雇用状況は?
雇用状況については、統計的に有意差は確認できませんでしたが、参政党投票者が不安定な雇用に置かれていると言うこともできません。

なお、参政党投票者の年齢構成は非投票者と比べて40代が若干多く、70代以上が少なくなっていますが、統計的に有意差があるとは言えない結果です。性別は若干男性が多いように見えますが、こちらも統計的有意差があるとはいえませんでした。


経済的には安定した層が参政党を支持する傾向。その主観的不公平感は?
ここまでは客観的な指標で見た経済状況から分析しました。ここからは主観的な不公平感や喪失感などが、参政党支持に結びついている可能性を検討します。
不公平感に着目した分析の結果、参政党投票者の不公平感は高いとは言えないものでした。
調査では、以下の項目について、「まったくない」「ほとんどない」「たまにある」「よくある」のいずれかで回答いただいています。この4つの項目を総合化して得点化し、投票先政党別の不公平感の平均を分散分析という手法を使って比較しました。
【使用した項目】
- あなたは、自分自身が公平な扱いを受けていないと感じることがありますか
- あなたは、自分と同じ世代・性別の人々は公平な扱いを受けていないと感じることがありますか
- あなたは、日本社会は公平な場でないと感じることがありますか
- あなたは、世界は公平な場でないと感じることがありますか
以下は分析結果を示したグラフです。値が高いほど、不公平感が強いことを意味しています。

参政党支持者は、他の政党と比べて、とりたてて不公平感が高いわけではありません。例えば自民党支持者とれいわ新選組支持者は不公平感に差があると、統計的に判断できましたが、参政党と差があるといえる政党はありませんでした。
経済的状況や不公平感と参政党への投票行動との関係
経済状況や不公平感は参政党への投票行動に影響はあるのか。分析の結果、以下、2点がわかりました。
- 経済的要因や不公平感は影響しない
- 外国人への否定的意見を持っていることは影響する
ここから分析手順と結果を細かく説明しますが、先を急ぎたい方は、次の段落「外国人情報に刺激を受けた「被害者ファディズム」?」へお進みください。
以下の表は、参院選の比例区で参政党に投票した人を「1」、それ以外の人を「0」とした「ダミー変数」と呼ばれるものに対して、どのような要因が影響するかを分析する二項ロジスティック回帰分析の結果です。「β」と表記がある列に*がついている要因が、影響がある要因です。
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不公平感以外にも、年齢、学歴、年収などの基本属性の他、様々な性格特性やジェンダー意識との関連(注2)もみていますが、関係が統計的に確認できたのは、この中では「外国人に対する否定的意見」(注3)だけでした。世帯年収や学歴といった経済的地位につながる要因や、不公平感は影響があるとは認められません。
参政党への投票は外国人に対する否定的な感情と強く結びついているのは確かですが、それが経済不安や不公平感に基づくものではないということがわかります。なお、別の分析で、外国人への否定的意見への肯定度と不公平感の関連は確認できましたが、その関連の強さは1を完全相関とした場合に、0.09しかありませんでした。外国人への否定的感情それ自体が、単独で醸成され、参政党投票へと結びついている様子が見えてきます。
外国人情報に刺激を受けた「被害者ファディズム」?
データから見えた参政党支持者の傾向を改めて整理します。
- 参政党支持者は従来から投票参加をしてきた層で右派的な認識を持っている
- 経済的に不安定な状況に置かれた人々とは言えない
- 主観的な不公平感は相対的に高いわけではない
- 外国人に対する否定的意識が極めて強く、この要因が投票行動に明確に結びついている
特にこの、外国人への否定的意見の強さは、「日本人として当然与えられるべき権利が外国人によって脅かされている」といった「被害者意識」の強さとしても、解釈できます。なぜなら、分析に使った外国人に対する項目の内容はすべて、間違った情報であるからです。それにもかかわらず、情報を受け入れてしまっているということは、実態のない「被害者意識」だけを得ていることを意味します。
こうした認識にもとづく投票行動は、「被害者ファディズム」と概念化できます。「ファディズム」は熱狂的な流行を指す言葉で、「ポピュリズム」とは別の概念として区別します。
ポピュリズムは、エリートに見捨てられた大衆という意識が強調されます。そのため「見捨て続けてきたエスタブリッシュ」に対する憤りを表明し、「反省の身振り」を要求します。
他方、ファディズムはあくまで「流行」を意味します。実際に不満があるかどうかはともかく、「外国人問題」という論点が短期間で注目され、「自分たちはその被害者である」とする態度が流行した。実際には多くの流言やデマを含む言説ではあれど、特にSNS上での議題設定によって「被害者モード」に基づく投票が、富裕層や安定層を含めた有権者にも拡がった。
この現象の内実を見ないまま、「見捨てられた中間層による憎悪の投票だ→中間層へのケアや不満への受け皿が必要だ」という、「反省の身振り」は、妥当性を疑う余地があります。
注1)総務省自治行政局選挙部公表「令和7年7月20日執行 第27回参議院議員通常選挙結果調 https://www.soumu.go.jp/main_content/001021472.pdf より確認
注2)分析に使用した質問項目の引用元情報はチキラボのこちらの調査・研究成果ページの「2025年東京都議選・参院選-有権者の政治意識-継続調査-概要pdf」ファイルの9-10頁に記載しています。
注3)「外国人に対する否定的意見」は以下の各質問の回答(「まったくそう思わない」=1、「どちらかといえばそう思わない」=2、「どちらかといえばそう思う」=3、「とてもそう思う」=4と変換した)を加算した値の平均値となっている。
- 外国人が増えると犯罪も増えると思う
- 外国人は日本の医療
- 社会保険や生活保護制度を濫用していると思う
- 外国人が日本人の仕事を奪っていると思う
- 日本の賃金が伸びないのは、低賃金で働く外国人が増えているからだと思う
- 外国人留学生の方が日本人学生より優遇されていると思う
- 日本人が差別されていると思う
付記
東洋大学大学院社会学科研究科博士課程の大川明李さんに分析協力いただきました。
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