
2025年6月22日、東京都議会選挙の投票・開票がありました。この選挙では参政党が3議席を獲得。その存在が注目されています。
さて、都議選で参政党に入れた人には、どういう傾向があるのでしょう。チキラボの調査では、各政党に投票した人の年齢・性別・年収などの基本属性も分析しています。使用データについては、前記事をご覧ください。
前記事:参政党は東京都の有権者に「しっかり」理解されている?〜参政党への投票行動を分析する①
まずご紹介するのは、各政党投票者の年齢分布です。そもそも現在の社会では、若年層は少なく、中高年の数の方が多いので、グラフ上でも中高年の方が多くを占めることになります。
その上で、例えば共産党や立憲民主党の投票者は、50代以上の割合が高い傾向があります。一方、日本維新の会や国民民主党は、他の政党投票者と比べて、相対的に20-30代の割合が高い。この点は、既存の調査などでも繰り返し指摘されています。
参政党の「ボリュームゾーン」は?
では参政党はどうか。
参政党投票者は、60代以上の高齢層よりも、40代-50代の割合が高くなっています。さらに「40代以下」で5割を超えており、比較的若い層の支持もあることが分かります。参政党に限らず、維新、国民、再生など、新興政党による若年層の取り込みが進んでいることが見てとれます。

一方でジェンダー差はどうでしょうか。今回の調査サンプル内では、男性の方が「投票にいった」数が多くなっていました。多くの政党が「女性よりも男性票が多い」という傾向が表れていましたが、参政党にもその傾向があります。むしろ、他の政党全般と比べても、男性の割合が高い部類に入ります。

スクリーニング前のデータを活用して、「参政党に投票した」人の数をプロットしてみます。サンプルの代表性には課題がありますが、あくまで人数の多いところを「ボリュームゾーン」と表現するのであれば、「40、50代の男性」ということになります。

ただし、下記の4点を鑑み、特定の年齢や性別を類型化して、「これぞ参政党の支持者像」とすべきではない、という点に注意が必要です。
- そもそも40、50代の男性を「ボリュームゾーン」にしている政党は他にも多い
- 年代の区切りによっては、「40代以下で半数を越えている」とも表現できる
- 「ボリュームゾーン」以外の年代・性別にも、広く投票者が存在する
- あくまで2025年の東京都議選の傾向であり、全国での選挙情勢とは分けて考える必要がある
学歴や婚姻状況についても、東京都有権者全体の傾向と大きく変わりません。世帯年収についても、強い偏りがあるわけではなく、広い層にわたっています。特定の所得階層にのみ着目した分析には、危うさがあるように思えます。



「叫ぶ在特会」から「笑顔の参政党」へ
ここまで、投票者の属性情報を整理してきました。では、参政党投票者は、これまでどういう投票行動を取ってきたのでしょうか。今回の調査では、都議選で投票を行う前の、2024年東京都知事選挙での投票先を聞いています。そちらのグラフを見てみましょう。

※設問ミスにより、都知事選の「無投票」をとれていないものの、特に「おぼえていない」人の中にそれらの回答が集まっていたと見られる。
分析の前にまず、明確な設計ミスがひとつあったことをに触れておきます。それは、都知事選において、「投票していない」の項目が漏れていたことです。そのため、選択項目の最後にあった、「おぼえていない」の回答が増え、「無投票」(投票していない)と「無回答」(おぼえていない)の区別ができないデータとなってしまいました。その上で分析を進めます。
今回の都議会選挙に対して、「これまで投票に行かなかった『無関心層』が初めて投票に行った結果、参政党が伸びた」という見立てをする記事もありましたが、都知事選の時の投票先無回答の数が都民全体と比べかなり低いことから、今回のデータからはそうした事実は確認できず、むしろ都知事選の際にも明確な投票行動をとっていたことがうかがわれます。ただし先に触れたようなデータの限界があるため、この点は再検証が必要です。

具体的な投票先を見ていきましょう。
参政党投票者は、都知事選では「小池百合子」に投票した割合は少なく、「蓮舫」に投票した人はさらに少ない。一方で、「石丸伸二」「田母神俊雄」に投票した人が高くなっています。また、「内海聡」「ひまそらあかね」投票者も、都民全体と比べて高くなっていました。
特筆すべきが、「桜井誠」投票者の多さです。参政党投票者の1割が、前の都知事選で「桜井誠」に票を投じたと回答していました。
10-15年前には、在特会の桜井誠氏の動画が、ニコニコ動画などで配信されていました。一方で現在では、桜井誠氏に限らず、複数のインフルエンサーや政治家が、外国人受け入れなどに対して否定的な意見を発信しています。舞台は2ちゃんねるやニコニコ動画から、Twitter(X)、YouTube、TikTok、各種ショート動画などに広がり、「見に行く動画」から「流れてくる動画」へと情報環境も変わってきました。
こうした中、「叫ぶ在特会」から「笑顔の参政党」へ、投票先を移した人が一定層いることがわかりました。また、参政党投票者のうち、前の都知事選で「田母神俊雄」「桜井誠」を合わせると25.7%。つまり参政党投票者の4人に1人が、一年前に田母神氏か桜井氏に投票していました。
さらに、両氏に加えて「内海聡」「ひまそらあかね」のいずれかに入れた人を合わせると32.3%。「石丸伸二」投票者の15.6%を合わせると、約半数に近づきます。参政党投票者の中には、これまでも「既存政党」所属ではない候補者に入れてきた人が、非常に多くいることがわかります。
「今の自民党には投票できない右派層」
2024年の東京都知事選挙では、田母神氏が約26万票、桜井氏が約8万票獲得していました。桜井氏は、2020年の都知事選挙で約18万票。2016年の都知事選では約11万票獲得しています。
石原都政が長年続いた後、猪瀬直樹氏、舛添要一氏、小池百合子氏が知事を務めてきた東京都には、もともと保守的な有権者も多数存在しています。そして過去の選挙でも、「反外国人」こそを上位の投票動機に据えてきた投票は続いてきました。
本記事では省略しますが、参政党投票者は、石破茂氏に対する好感度が極めて低く、安倍晋三氏、高市早苗氏に対する好感度がとても高いのも特徴です。都議選では、「反外国人」を明確に議題設定し、トランプ大統領や欧州極右政党に共感を示す姿勢に、「今の自民党には投票できない右派層」が、相応に流れ込んだと見て取れるでしょう。
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