
2025年7月20日に投開票が行われた参議院選挙。チキラボではこの選挙期間中、日本社会で暮らす人々の政治に関わる意識を明らかにするため、継続調査を実施しました。
今回行ったものは、同じ回答者に対して 、3つのタイミングでアンケートを行うという「パネル調査」です。第1回目は選挙序盤の7月4日~5日に、第2回目は選挙中盤の7月11日~14日に、第3回目は開票日直後の7月21日~22日にそれぞれ実施。人々の変化を追いました。
調査の概要はこちらをご覧ください。
政治的キーワードに対する好感・反感を“温度”で測定
第2回目の調査では、様々な「概念」に対する「感情温度」を調べています。感情温度とは、人物などについての好感度を温度に例え、どれくらい好感を抱くのか、あるいは反感を抱くのかを尋ねて可視化する調査尺度です。具体的な質問は、次のようになっています。
政治や社会の話題でしばしば取り上げられる肩書や言葉についてうかがいます。以下の肩書や言葉に対する感情を温度にたとえてお答えください。
もし好意も反感もない場合は 50 度としてください。好意的な気持ちがあれば、その強さに応じて 60 度から 100 度の数字を選択してください。逆に、反感を感じていれば、やはりその強さに応じて 0 度から 40
度までのどこかの数字を選択してください。もし、ご存知でない場合、わからない場合、答えたくない場合は、「DK」をチェックしてください。
今回調査したのは、選挙期間前半にSNSで用いられることの多かった、以下の10ワードです。
尋ねた肩書き・言葉
- 「財務省」
- 「政治家」
- 「マスメディア」
- 「極右」
- 「排外主義」
- 「リベラル」
- 「日本人ファースト」
- 「多文化共生」
- 「オーガニック」
- 「ジェンダー平等」
早速、それぞれのワードごとに、主要政党支持者の傾向を見ていきます。
なお、以下のグラフには政党名の右側にドットが記されていますが、これは各政党支持者の回答の平均値を表しています。
れいわ、参政党、日本保守党の支持者は「財務省」に強い反感

まずは、「政治家」「財務省」「マスメディア」の傾向です。これらのワードに強い好感を示す各政党支持者は少なく、「好感も反感もなし」から「強い反感」の間で分布していました。
顕著なのは、国民民主党、参政党、日本保守党それぞれの支持者の「マスメディア」不信です。また、れいわ新選組、参政党、日本保守党それぞれの支持者は、「政治家」「財務省」への反感が強く表れていました。もし「財務省」不信を重視して投票する場合、れいわ、参政党、日本保守党で迷う、という選択になる可能性もあります。
立憲民主党、共産党の支持者は「排外主義」「極右」に反感

続いて、「極右」「排外主義」「リベラル」といった政治思想に関するワードです。
「排外主義」というワードには、基本的に多くの政党支持者が反感寄りでした。特に強い反感を持っていたのは、立憲民主党と日本共産党の支持者。一方で参政党と日本保守党の支持者は、「排外主義」という言葉には反発も好感も示していない傾向がありました。
「極右」というワードもまた、多くの政党支持者が反感を抱くワードでした。最も強く反感を抱いていたのが日本共産党の支持者で、自民党、立憲民主党、日本維新の会、れいわ新選組の支持者も、強い反感を抱く傾向がありました。
国民民主党・参政党の支持者は、「極右」という言葉に反発も好感も示さない傾向があり、日本保守党の支持者ではむしろ、やや好意的に捉えられていました。
「リベラル」では、これとは分布が大きく異なっています。立憲民主党、日本維新の会、日本共産党、れいわ新選組の支持者は、好感を示す方向に分布しています。一方で、自民党や公明党の支持者はやや反感傾向。国民民主党の支持者はその次に強めの反感傾向。そして参政党、日本保守党の支持者では、さらに強い反感傾向が見て取れました。
参政党・日本保守党は「日本人ファースト」に高い好感、一方で「多文化共生」に強い反感
参政党が掲げた「日本人ファースト」というスローガンについてはどうでしょう。参政党支持者は、このスローガンに極めて強い好感を示しています。日本保守党の支持者も、これに続きます。
自民党、日本維新の会、れいわ新選組の支持者は、「日本人ファースト」に好感も反感も示していませんでした。立憲民主党、共産党支持者は、むしろ反感を示していました。
「多文化共生」というワードはどうでしょう。自民、公明、日本維新の会、れいわ支持者は中間的でしたが、立憲、共産の支持者はやや好意的な方向に傾いています。
対照的なのが、参政党、そして日本保守党の支持者です。両党の支持者は、「多文化共生」というワードに、強い反感を示していました。
「オーガニック」への反応は意外にもフラット― 参政党支持者よりも公明・れいわ支持者が好感

参政党を語る際に用いられることの多かった「オーガニック」という単語については、いずれの政党の支持者も、フラットな反応でした。参政党支持者が際立って「オーガニック」好きかと言えばそうではなく、むしろより好感を示していたのが公明党とれいわの支持者でした。日本保守党の支持者は、やや反感を持っている様子です。ただ、全体としてはほぼ好感も反感もない状態と言えます。
「ジェンダー平等」への受け止めに顕著な差― 共産・立憲は好感、参政・保守は強い反発

最後に、「ジェンダー平等」はどうでしょう。共産党支持者がもっとも高く好感を示しており、立憲民主党、日本維新の会、れいわ新選組の支持者がそれに続きます。
他方で国民民主党の支持者は、「ジェンダー平等」にやや反感傾向。参政党支持者が強い反発を、日本保守党支持者が激しい反発を示している様子が見てとれました。
新興政党支持者の強い感情
10のワードの感情温度を支持政党別に確認してきましたが、いずれかのワードでかなり強い反応(20以下の強い反感または80以上の強い好感)を示す政党は、れいわ新選組、参政党、日本保守党支持者であることもわかります。特定ワードへの「強い感情」は、SNSで支持を広げる新興政党の支持者の特徴であると言えるのかもしれません。
本調査は、マンスリーサポーターのみなさまのご支援により、
計画・実施することができました。心より感謝申し上げます。
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