8日に投開票となった衆院選。「高市人気」に支えられ、単独で3分の2議席の獲得に至った自民党。では、この「高市人気」は、どの層によって、そしてどのような要因によって支えられているのでしょうか。
チキラボが現在実施中の、衆院選における有権者の政治意識継続調査。この第1回目の調査を使って分析していきます。
「高市早苗」の好感度・認知度は主要党首の中で最も高い
まず、高市早苗氏の好感度を他の政治家と比較して確認します。主に、今回の衆院選に候補者を擁立した政党の党首を中心に調査していますが、高市氏の好感度が最も高いことがわかります。

好感度を測るのに使用したのは、感情温度と呼ばれる尺度です。0は「最も反感がある」、100は「最も好意がある」状態を表し、回答者にはこの範囲で選択してもらっています。
以下の図には、各政治家に対する感情温度の平均値を示しています。なお、選択肢の中には「DK」(知らない、わからない、答えたくない)を用意しています。
「わからない」や「答えたくない」との理由から回答している人もいるため、厳密な指標ではありませんが 、このDKの割合の少なさは、ある程度認知度の高さを反映していると思われます。各政党の現党首の中で高市氏は2.2%と、この割合が低いです。総理大臣として普段からメディアの種類問わず露出が多いことなどを考えると、認知度の高さがうかがえます。
支持政党ごとに分かれる「高市早苗」の好感度
次に高市氏への感情温度を選挙序盤段階での比例区投票予定先政党別にも確認します。すると、相当なばらつきがあることが分かります。自民党を投票予定としていた人が80という非常に強い好感を示している一方で、中道改革連合、共産党、れいわ、社民党投票予定者は20〜30の間にあり、非常に反感が強い様子です。なお、回答者数が小さい政党はぶれが大きくなる可能性があり、参考値程度にご確認ください。

YouTubeでの選挙情報取得時間が長い層で、好感度が高い(高市・玉木・神谷・百田)
第1回目の調査時点で、すでに選挙情報取得先メディアとして存在感を高めているのが、YouTubeです。このYouTubeからの選挙情報取得時間別に、各政党党首への感情温度を示しました。すると、高市氏の場合には、YouTubeの視聴時間が長い層で、好感度が高いという関連が確認できます(ここで確認しているのは相関関係であり、因果関係ではない点、ご注意ください)。
グラフではYouTubeでの選挙情報取得時間を、「全く触れていない」と回答した人以外が、概ね均等に別れるように、以下4グループに分けました。3時間以上は20時間以上と回答した人も含んでおり、その内訳はこちらの記事で確認いただけます。
- 「全く触れていない」(n=782)
- 「30分未満」(n=243)
- 「30分-1時間未満」(n=138)
- 「1時間以上-3時間未満」(n=123)
- 「3時間以上」(n=196)
3時間以上のカテゴリでは、回答した取得時間に幅があるため、過去1週間のYouTubeでの選挙情報取得時間の回答を以下のような値に変換し、感情温度との関連の強さも算出しました。
- 「全く触れていない」=0
- だいたい30分未満=0.25
- だいたい30分以上1時間未満=0.75
- だいたい1時間以上3時間未満=2
- だいたい3時間以上5時間未満=4
- だいたい5時間以上10時間未満=7.5
- だいたい10時間以上15時間未満=12.5
- だいたい15時間以上20時間未満=17.5
- だいたい20時間以上=20
- 答えたくない=欠損値
その結果、高市氏の感情温度との関連の強さを表す値はr = 0.164です。
この値は-1〜1の間を取り、0に近づくほど関連がないことを、-1または1に近づくほど関連が強いことを示します。
YouTubeでの選挙情報取得時間と高市氏への好感度の間に正の相関が見られましたが、その強さは、それほど強いわけではありません。しかし、YouTubeで選挙情報に触れる層と高市氏への好感度が親和的である可能性は注目に値します。

加えて注目しておきたいのが、石破氏、中道改革連合の斉藤氏・野田氏、れいわの山本氏、共産党の田村氏、社民党の福島氏の野党・リベラル系政党ほど、YouTubeでの選挙情報の取得時間が長い層で、好感度が低い傾向が確認できた点です。
ここで検討が必要なのは、「YouTubeでの選挙情報取得時間が長い」という要因が、単に「年齢が若い」ことの媒介変数として機能していたり、年齢がYouTubeでの選挙情報取得時間と好感度どちらにも影響を与えている可能性です。そこで年齢の影響を考慮しても関連が残るのか、確認しておきます。
すでに配信したこちらの記事では、若年層ほど、YouTubeの選挙情報取得時間が長くなる傾向がはっきりと確認できました。そこで、偏相関分析を用いて年齢の影響を取り除いた上で、YouTubeでの選挙情報取得時間と各政治家との好感度の関連を確かめてみたところ、吉村氏以外は、年齢の影響を取り除いても、YouTube選挙情報取得時間と好感度には相関関係があることが確認できました。
高市氏の場合、YouTubeで選挙情報に触れていないグループの好感度も、他の政治家に比べ高いため、全体的に好感度が高い政治家であることは確かでしょう。その好感度の「強さ」とYouTubeでの選挙情報への接触に、何らかの関係がある可能性がこのデータから確認できます。
しかし本記事の分析だけでは、YouTubeでどのような情報に触れているのかがわからず、接触内容の影響なのか、それともYouTubeによく接しているという特性が、高市氏の好感度と結びつく他の要因と関連しているだけなのかなど、関連性の中身がはっきりしません。
これについては、さらに分析を深める形での検証記事を用意していきます。
政治家や政党によって、Youtube利用層における評価のされかたに違いがある現状。そしてこの衆院選、YouTubeでの選挙情報の影響力に注目が集まっています。投票行動に対するメディアの影響は今回の選挙でも検証が必要な要素となっています。
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【記事修正のお知らせ】(2026.2.19追記)
本記事において、データの統計的解釈および表現に厳密さを欠く点がございました。お詫び申し上げます。
以下に記したとおり、他の要因も複数考慮した上で、さらなる分析が必要であるため、後日、フォローアップ分析の結果を公表いたします。
〈本文中の相関係数 rについて〉
本文での解説において、回帰係数的な解釈(単位あたりの変化量)を用いた記述を、統計学的に適切な「相関の傾向」を示す表現へと修正いたしました。YouTubeでの情報取得時間と好感度の「具体的な上昇幅」に触れておりましたが、正しくは「関連の強さの傾向」を示すものとなります。
〈因果関係に関する表現について〉
分析結果は相関関係を明らかにしたものであり、因果関係を示すものではありません。因果関係に言及したような表現部分は適切に改めました。
〈その他の要因について〉
YouTubeでの選挙情報取得時間の長さと各政治家への好感度との関係には、他の変数の影響が交絡している可能性や、好感度が高い人ほどYoutubeで関連情報を視聴するという逆因果の可能性を排除できません。また、Youtubeでの選挙情報取得時間は、特定の政治家に関する動画の視聴量を直接意味するわけではないことにも留意が必要です。最初の発信記事では、これらの言及を省いて結果を提示してしまいましたので、本記事でその点をお知らせいたします。
以上の修正に伴い、記事全体の表現を微調整しました。
なお、YouTube利用と各政治家の好感度との関連が示唆された、という結果に変更はございませんが、関連の強さは比較的弱いものです。上に記したように、他の要因を複数考慮した上でさらなる分析が必要であるため、後日、フォローアップ分析の結果を公表いたします。